「介護福祉人材需要と外国人人材の可能性」セミナー 報告
(第2回 外国人福祉医療人材育成研究会)


日時
2017年8月31日 13:10〜17:00

会場
主婦会館プラザエフ

2017年2月に続いて2回目となる「外国人福祉人材」に関するセミナーは、全国から介護施設関係者、専門学校・大学などの介護人材養成施設関係者、日本語学校関係者など130名が参加して行われました。翌日9月1日から改正入管法による在留資格「介護」が施行されるタイミングでの開催となり、主催者あいさつに立った国際人流振興協会の堀会長は、「養成校では資格取得だけでなく、その後の就労も視野に入れた教育を考えていただきたい。また介護施設を外国人にとっても魅力的な職場とするためにはなど、さまざまな意見交換の場としていただければ」と述べました。

13:20〜14:00 講演1「外国人の介護人材受け入れについて」法務省入国管理局 ≫
14:05〜14:55 講演2「介護福祉人材確保について」厚生労働省 社会・援護局 ≫
15:00〜15:40 講演3「介護現場の現状と課題」社会福祉法人 若竹大寿会 ≫
15:50〜16:50 シンポジウム「介護福祉人材需要と外国人人材の可能性」 ≫

講演

■講演1〈外国人の介護人材受け入れについて〉
法務省入国管理局 入国在留課 梅原 義裕 補佐官



昨年11月の改正入管法成立により、本年9月1日から施行される在留資格「介護」について、その創設までの背景や経緯、留学生としての入国から養成施設を卒業して介護福祉士資格を取得、施設等に就労するまでの流れを説明しながら、学校や施設が外国人受入れにあたって行うべき手続きや留意する点などを、資料に沿って細かく解説した。今回の在留資格「介護」については、専門学校や大学などの養成施設で介護福祉士の資格を取得し、法人施設と雇用契約を結んで介護の業務に従事する場合に限って付与されることとなっているため、実務経験ルートで資格を取得した場合には適用されないなどの注意点を確認。実際に申請があがってくるのは養成施設を修了する来年3月以降になるとの見通しを示した上で、必要な申請書類などの準備についても説明した。また入管として、日本語学校や養成施設在学中の留学生管理について、とくにアルバイト時間や適切な就労先の確認などを徹底するよう求めた。



■講演2〈介護福祉人材確保について〉
厚生労働省 社会・援護局 福祉基盤課 熊野 将一 福祉人材確保対策室長補佐


介護福祉人材を取り巻く現状について、職員数の推移や求人状況、賃金や離職率などのデータを資料に沿って説明した上で、介護福祉人材の人手不足感が今後も高まると強調。国として講じている人材確保策について、離職した人材の再就職支援制度、学生に対する奨学金制度、施設における処遇改善支援策などについて解説した。その上で、外国人の受入れについては人材不足への対応ではなく、EPA(経済連携協定)による受入れ、技能実習制度での介護職の追加、そして在留資格「介護」の付与など、それぞれの制度の趣旨に則って進めていくという姿勢を示した。とくに技能実習制度に介護職を追加する件については、厚労省の検討会においてまとめられた制度設計の考え方の詳細な資料を示しながら、利用者の不安や懸念、職場の処遇悪化を招かないよう、またサービスの質を担保するために11月からの施行に向けて準備中であると説明。そして留学生の就労機会を拡げる観点から創設された在留資格「介護」に対しても期待を寄せ、29年度生から卒業時に国家試験受験が義務付けられる介護福祉士の試験制度(33年度までは経過措置あり)の変更についても解説した。

■講演3〈介護現場の現状と課題〉
社会福祉法人 若竹大寿会 竹田 一雄 理事長


横浜市を中心に140の事業所、1400人の職員を擁し首都圏最大規模となる法人の概要を紹介。2014年からはEPAに基づき介護人材を受け入れていることに加え、本年からは技能実習生の受入れに向けてすでにフィリピンでの現地面接を行うなど外国人採用に積極的な同法人の活動について語った。とくに、同法人のポリシーの一つとして「差別をしない」ことを掲げていることに触れ、「これまで採用した外国人は介護業務もコミュニケーション力も日本人よりも優秀」「トラブルが起きるのは外国人ゆえでなく、経営者や職員の質の問題」と断言した。人が集まらない施設の特徴などをあげ、「日本人が働きたくない施設では、外国人も働こうとは思わない。外国人の間で施設の評判や情報が交わされ、良い施設が選ばれている」と指摘。同法人の外国人スタッフについては「介護適性は日本人よりも高い」「記録業務も意外にも問題は無かった」「利用者の家族の評価も問題ない」と働きぶりを高く評価し、「優秀な人材がまた次の人材を呼ぶ」という好循環に繋がっている状況を紹介した。また、世界的に日本の介護職はきついという評価になっている点について、「不要な記録の簡略化・電子化」「属人的なケアではなく、誰でも成果を出せるよう普遍化する」「ICTの活用」などで改善できるとの考えを示した。

シンポジウム

学校法人新井学園 赤門会日本語学校 新井永鎮 常務理事
学校法人敬心学園 日本福祉教育専門学校 八子久美子 介護福祉学科長
社会福祉法人 若竹大寿会 竹田一雄 理事長
一般社団法人国際人流振興協会 専務理事 有我明則(進行)
進行 日本語学校、専門学校それぞれにおける介護人材育成への取り組みについてご紹介ください。
新井 本校では2009年にEPAによる受入れ人材の日本語教育を経産省から受託し、6ヶ月間にわたり語学研修と生活指導等を行った。2016年からは文科省の委託事業として「日本語教育と介護教育プログラム開発」を受託している。また本校系列の人材系企業がハンドリングする形で介護福祉士奨学支援プログラムを運営。介護施設が奨学金を提供し、日本語学校1年、介護福祉専門学校2年の学費にあてるもので、在学中は施設でのアルバイト、卒業後は施設に就労する仕組みになっている。
八子 昨年から留学生を本格的に受け入れている。初年度はベトナム、ネパール、インドネシア、フィリピンなど、非漢字圏の学生ばかりだったので本当に大変だった。日本語力の問題だけでなく、生活習慣や時間の観念、病院のかかり方など、指導が必要なことばかりだった。留学生用のガイドブックを作成したり、オリエンテーションを繰り返し行った。
進行 日本語学校から養成施設へ、養成施設から就労へとつなげていくにあたって、留学生の職業適性をどのように意識していますか。
新井 介護人材の育成については、とくに他の留学生と分けて考えている点が3つある。1つは、賃金のためではなく介護の仕事がしたいから介護士になるというマインドを持っている学生を選ぶこと。2つめに、就労条件については情報を全てオープンにし、来日前と来日後の情報に齟齬がないようにすること。3つめは、入国時の日本語レベルは理想はN3以上だが、N4ないしプラスαの教育を行って入国させるように取り組んでいる。
八子 入学選抜の際には、介護の仕事にどれだけの思いがあるかを重視している。もともと母国では成績優秀な学生が多いので、やる気のスイッチが入ると頑張れる。入学時点で日本語力が足りなくても広い視野を持って育てていきたい。学内でも日本人学生と共に助け合えるような環境を心掛けている。
進行 日本語学校と専門学校・大学、施設との連携についてはどのようにお考えですか。
新井 ゼロベースで日本に来て、2年間で専門学校・大学入学レベルのN2にするのは難しい。進学後も、日本語教育については日本語学校と連携しながら、2年プラス2年の合計4年間で良質な人材を育てていくという考え方も出来るのではないか。技能実習生の場合、1年後にN3必須という指針があるが、働いているだけで座学なしでN3合格は無理。介護の現場で使う日本語と日本語能力試験の問題は乖離があるので、ぜひ日本語教育機関と連携してほしい。
八子 今年から日本語学校の先生に非常勤で入ってもらい、教務と教員と連携して全面的にサポートする体制をとっている。学校全体として、学科を超えて全ての人たちが何らかの形で関わっていく体制を作っていくことが大切だと思っている。配付資料にはすべてふりがなをふったり、適切に補習を行えばついてこれる学生は多い。皆、やる気はとてもあるので、私たちの関わり方次第かなと感じている。日本語の先生たちとも協議しながら、レベルに応じた言葉のかけ方、生活習慣や文化を理解して接しながら語学力を高めていくことが大事だと思う。
竹田 語学力は結局は量をどれだけこなすか。現場で喋らせ、読ませ、書かせる。日本人職員の外国人への対応の仕方も大事なので、現場向けのレクチャーをしていくことも必要ではないだろうか。国は建物を作ってお金を出せば介護ができると思っているが、介護は人。人づくりが介護の全てだと思っている。学校は文科省、施設は厚労省という縦割りになっておりが、厚労省と教育機関の皆さんが繋がりをもち、現場の実情を伝えていく作業も必要なのではないか。学校からも介護の展示会に足を運ぶなどして最新事情を学んで欲しい。